2歳の時の運動会。
年長児の逆立ち歩き競争を見ていた莉緒。
「パパ、莉緒は月組(年長児)になったら逆立ちで一番になる!」と言ってから3年が過ぎた。
もうすぐ運動会。
毎日、園でも家でも練習していた。
それだけではない。
何時でも、何処でも逆立ちで歩いてしまう。
公園はもちろん、病院の待合い室、スーパーマーケット、レストラン・・。
危険な場所や人の迷惑にならない限り止めなかったのです。時には恥ずかしい時もありましたけど・・。
知らない人が見て驚き
「凄いね~」なんて言われると上機嫌。
同じ歳ぐらいの子供が真似をしてみるが・・出来ない。そしてその子はお母さんから叱られている光景が目に映る。
運動会が一週間後に迫った休みの日。
天気も良かったので遊びに行くと、同じクラスの女の子がお父さんと遊びに来ていた。
その子はKちゃんと言って、運動も学習も優秀なお子さん。挨拶もキチンと出来てご両親の教育の素晴らしさが伺える。
常に目標にしているお子さんなんです。
お父さんとお話をした。
話題はやっぱり運動会。
お父さん・・「ウチのKは逆立ち歩き競争で優勝を狙っているんですよ~」。
「最近は家で毎日練習なんです」。と・・
「そうなんですかぁ、ウチも同じなんです」と僕。
「楽しみですねー、どっちが優勝するのかな?」なんて話をしていました。
その帰り、莉緒に訊いてみた。
「莉緒、優勝出来る?」
すると莉緒が答える前に真優が
「莉緒なら大丈夫だよ!いつも一番なんだよ」
・・真優よ、お前はどうなんだい(笑)
莉緒は 「うーん・・どうかな?」 と言って話題を変えてしまった。
少し不安になってしまった僕は、
「誰かに勝つのではなくて自分に勝つんだよ」
と言ったのでした。
でも、僕は「優勝争いに加われるだけでも良い」。くらいにしか思っていなかった。
困るのは優勝出来ずに泣かれることだ。
そんな時は何て言葉を掛けようか?などと考えていたのです。それに前年のように、無理だと思って諦めることだけはして欲しくなかった。
そして、運動会当日。
生憎の雨模様で体育館での開催となった。
体育館での運動会は4年ぶり、あの時は妻も一緒だった。
出掛ける前に、二人はお仏壇に手を合わせて
運動会を頑張る事を誓った。
ママも必ず見ているだろう・・。
会場に到着するとたくさんの人達で歩きずらい。集合地点に向かう途中・・「莉緒!」と声を掛けられた。Kちゃんだ!
「莉緒、今日は私が勝つからね!」と言ってきた。・・それを聴いて頬笑むだけの莉緒。
歩きながら莉緒に質問した。
「莉緒、今日は誰に勝つん?」
すると・・「自分だよ」と言いニッコリ。
「真優も手を抜かずにな! 二人とも頑張れ」
オープニングの鼓笛演奏が終わり
最初の種目がスタートした。
逆立ち歩き競争は次の次(3番目の種目だ)
・・親の自分が緊張してきた。
そして、いよいよ始まる。
「プログラムNo3、年長児による逆立ち歩き競争」のアナウンスと同時に全員元気良く走って入場して整列。
(この競技は一人づつ逆立ちて歩き、その歩いた距離を競う)
直ぐに倒れてしまう子、練習よりも距離を伸ばす子、様々だ。
そして、先に真優が登場した。
普段の練習の成果が出せるか?
(出来れば姉妹で優勝を競って欲しい)
・・しかし、真優は折り返し地点でバランスを崩して倒れてしまった。
(現時点ではトップだったが、後の子にあっさりと抜かれてしまった)。
そして、「莉緒に勝つ」と言ったKちゃんだ。
優勝を狙っているだけあって、安定している。距離もかなりなものだ。
直線で疲れたのか?倒れてしまったが立派な成績だ。優勝でもおかしくない距離を出した。
そしてラストに莉緒の登場。
表情が笑っているように見えた。
そして、スタート。
良いテンポで安定している。真優が失敗した
折り返し地点を難なく通過して、目指すはKちゃんの記録の地点だ!
・・すると場内から「莉緒ちゃんコール」
(これには僕も驚いた)
Kちゃんの地点に迫ると大きな拍手と歓声。
そして・・ついにKちゃんの記録を抜き
優勝確定だ!
拍手と歓声は更に大きくなった。
僕は大声で 「まだまだ行け!行けーっ!」と
叫んだ。
限界まで頑張って欲しかったからだ。
そして、この先誰にも抜けない記録を打ち立てて欲しかった。
莉緒はスタート地点まで行きターンを決めた
どこまで行けるか?と思った瞬間、倒れてしまった。
「あーっ・・」という声が場内に響き渡った。
記録は100mオーバー
良く頑張った。凄かった。
素晴らしかった。
まだ、2才の頃に「一番になりたい」と言って
から1日も欠かさず練習していた。
彼女の努力の賜物だろう。
見ていて本当に感動した。
優勝の記念品を園長先生から頂きました。
その後二人は、他の競技も手を抜くことなく、一生懸命に頑張った。
前年とは比べものにならない程の成長を感じた。・・子供達も僕も最高だった「こども園最後の運動会」でした。
きっと天国のママも喜んでいたと思います。
今になって思います。
努力して掴んだ優勝なんだ。と僕自身も思っていたのですが・・どうやら違ったみたいです。(文中、努力の賜物と書いていますが・・)
莉緒にとって逆立ちは楽しい遊びだったのだと思うのです。
園や家での逆立ちも遊びの延長。
まして、みんなと競争となると更に楽しい。
・・その後の彼女を見ているとそんな気がしてくるのでした。
一方、この運動会で妹の真優は莉緒の競技を見てかなり刺激を受けたのです。
彼女の方が「努力は実を結ぶ」と言うことを学んだんじゃないかな?と思います。
この運動会を境に確実にヤル気スイッチが入って来ました。
その後の学習でも、姉を追い抜き
その差を拡げることとなりました。
(初めは莉緒の方が学習も進んでいた)
二人の性格の違いがハッキリとして
学習スタイルにも変化が必要になった頃です。
次回につづく