シングルファザーの子育てブログ

双子の女の子を育てるシングルファザーの奮闘劇。

辛い思い出の話。(笑)

何処かのテレビ局でやっていた番組で、

「笑ってはいけない〇〇」とか言うものがあった。(今でも年末とかにやってるのかな?)

それはコメディアン数人が24時間

笑ってはいけないルールなのだが、

仕掛人があらゆる手を使って笑わせてくるのだ。そして笑うと尻を叩かれたり、蹴られたりするくだらない番組なのだが、

 

私達が普段生活している中でも、

笑ってはいけない場面が訪れる。

 

・・・例えばお葬式。

 

不謹慎な話なのだが、

あれは、15年ほど前だろうか、

仕事関係のお葬式に出たことがあった。

全く、亡くなった人は知らない。

ただ、仕事関係の人のお父さん。

 

葬儀の会場は異様に広かったのを覚えている。生前に受賞した表彰状が遺影と共に

受付の近くに飾られていた。

ふと・・・遺影の写真を見ると、

ポカーンと口を開けているお爺さんの写真。

直ぐに、「あれ、こんな顔を何処かで見たことがあるぞ!」と思った。

でも、それが何なのか思い出せない。

 

「何だったっけ? う〜ん、あれは???」

と、ずーっと思い出そうとしていた。

そして、僧侶の読経が始まった頃に、

不意に思い出した。


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ムンクの叫び」だぁ!

 

あの、口をうぉ〜っと開いた感じ

正に「叫び」だ!

 

思い出したら笑いが止まらない。

「いや、いかん!」と姿勢を正して

正面を見ると・・・・!

祭壇の遺影がっ・・・・叫び。

 

こうなると・・・笑いのツボに入ってしまったようで、笑いを堪えるのに必死どなった。

 

笑っては失礼。

下を向いて目を閉じた。

 

すると・・・脳裏に、叫び!

 

駄目だ!・・・笑ってはいけない。

しかし、もう限界だぁ・・・。

 

必死に笑いを堪えると

涙が出てくる。

 

そして、いよいよ

一般の弔問者のお焼香が始まった。

係の人に案内さらて席から立ち上がったときには、すっかり涙目の自分。

絶対に見てはいけない! 祭壇の遺影。

そう、心で誓ったのだが、

お焼香の時に見てしまった。

 

もう、お腹が限界くらいに痛い。

鼻の孔がフガフガしているのが分かる。

でも、笑ってはいけないので

歯を食いしばっている。

すると・・・涙が頬を伝う。

 

手を合わせ、

泣きながら、親族の方達に会釈をして

外に出た。

 

ホントに苦しかった。

「あれ、反則じゃん!」ひとり車に乗って

呟いたのだった。

 

会社関係の弔問客の中で

泣いていたのは自分ひとりだろう。

・・・「なんて、情に厚い人なんだろう」と思われたのかも知れない。

 

  「良い人に思われたかな?

・・・うん、きっとそうだろう。」と

勝手に思って満足していた。

 

 

 

 

それから、数年後。

この、お葬式の時よりも

過酷な状況に直面することとなった。

 

 

 題して、「お昼のお悩み相談」の悲劇。

 

仕事の同僚でN田と言う男がいた。

髪を肩まで伸ばしていて、メガネをして

口髭を長く生やしていた。製造業では珍しい

誰が見ても怪しい風貌。

しかし、彼は音楽の教員免許を持っていて

芸術家のような雰囲気もあった。

 

普段は、あまり話をしなかったのたが

その日の昼休みに珍しく話しかけて来た。

 

彼の第一声が、

「僕の顔はどうですか?」だった。

 

以下、彼との会話。

『』・・・N田

「」・・・俺

()・・・俺の心の声。

 

 

「どう?って聞かれても・・・個性的で良いんじゃないの?」

『俺・・・化け物って言われてたんですよ、小学生の時に・・・。』

「はぁ?」

『あだ名が・・・。』

「何で・・・化け物なの?」

『顔が・・・』

 

最初は笑い話で言ってるものと思って

彼の顔を見ると、笑っていない。

真剣な顔をしている。

 

この、真剣な表情を見て、

笑いが込み上げそうなのをじっと我慢した。

更に彼は、

『卒業文集にも、化け物って書かれちゃって・・・この前、女房が文集を読んで大笑いしていたんですよー!』

「・・・・・。」

『酷いと思いませんか?』

(笑いを堪えながら)「それは酷いねぇ」

 

すると、彼は小学生の時に虐められた話を始めた。

彼はビアノを習っていて、学校でビアノを弾く事になったのだが、誰かに譜面を隠されてしまったのだ。

困った彼は、何かを弾かなくてはならない。

 

彼は、譜面無しで弾ける曲を弾いたそうだ。

 

・・・その曲は、

崎陽軒

 

????・・・「崎陽軒って?」

 

『焼売のCMのやつ・・・』

 

(もう、この段階で笑いを堪えていて辛い)

 

『美味しい焼売、崎陽軒♫って・・・弾いた。』


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もう駄目だぁ〜限界だった。

笑いを堪えるのが、こんなに辛いとは。

しかも、N田は真剣な顔だ!

正に・・・化け物と言うあだ名がビッタリの表情だ!

 

「しゅ、しゅ、しゅうー、まい。

あのCM?」と声を発するのがやっとだ。

『そう、それを高速で弾いたんです。』

(もう、ホントにヤバい💦)

 

涙が出できた。

しかも、今回は鼻水とセットだ。

 

僕は声を震わせながら、

「そ、そ、それで・・みんなの反応は?」

 

『いやぁ、よく覚えてないけど・・・その日からしばらく【崎陽軒の妖怪】って言われた』

 

もう、駄目・・・

完全に駄目だぁ〜・・・

 

僕は下を向いて、声を押し殺して

「クッ、クッ、クッ」と声を出すのがやっとだ。涙も溢れて、頬を伝う。

・・・・笑いを堪えるのが、こんなに辛いものとは知らなかった。

 

すると、N田は、

『ありがとう、僕の話を聴いてくれて』

『しかも、泣いてくれるなんて・・・阿久田さんって本当に良い人だなぁ・・』と、言って握手を求めて来た。

 

(いや、いや、違うってば)と心の中で

思えば思うほど涙が止まらない。

 

涙と鼻水の付いた、

汚い手を下を向きながら差し出すと

ガッチリと握手をしてきた。

 

『また、相談します』

そう言って、彼は立ち去って行った。

 

N田は完全に勘違いしていた。

 

笑うのを堪えるのが、

こんなに辛いとは・・・・。