シングルファザーの子育てブログ

双子の女の子を育てるシングルファザーの奮闘劇。

不思議な壁の向こう側。

男は目の前の壁の向こうに

興味があった。

 

眼の前に大きくそびえる 

大きな壁。

 

「あの向こうに何があるのか?」

 

 

男の日常は

いつも退屈だ。

与えられた仕事を毎日、毎日、

こなすだけの日々を繰り返さす。

 

そんな生活に

嫌気が差してきた。

 

 

そんな時に、

突然、現れた不思議な壁。

 


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壁の向こう側では

楽しそうな声が聞こえる。

 

「あぁ〜、向こうには何があるのか?」

 

 

すると、壁には一箇所の覗き穴。

 

 

思わず覗いて見ると、

人々が楽しそうに語り合っている。

老いも若きも、男も女も、

みんな楽しそうだ。

 

 

「行きたい!・・・壁の向こうへ」

 

 

 

すると、壁の向こう側から

1枚の紙切れがヒラヒラと

舞いながら男の前に落ちてきた。

 

「こちら側に来たいのなら・・何があっても私達の考え方に賛同しなければいけない。それが貴方には出来ますか?」

 

男は、すぐさま

退屈な日常から出たいがために

「ぁぁ、出来るとも!」と答えた。

 

 

すると、壁に1枚のドアが現れ、

ドアが開いた。

 

 

迷わず、男はドアの向こう側に

入っていった。

 

 

 

 

そこは、大きな原っぱが広がっていた。

周囲には石の彫刻の像が並んでいる

古びた井戸の上に女性がひとり佇んでいた。

 

女性は「ようこそ〜」と彼に声を掛けてきた。

「ここに来られたのは、貴方は主と同じ考えを持っていらっしゃるのでしょう。ここでは、みんな主と同じ考えの人ばかり・・・主にお会いください。」

 

大きな原っぱの高台に、

主は座っていた。

まるで、魔女のような風貌だが、

男を見つめ微笑んている。

 

「みんなで、楽しく過ごしましょう」

 

男は、その言葉に

安堵した。

 

 

壁の中での暮らしは

毎日、楽しく

一日の時間が過ぎるのが速かった。

思っていること、

考え方、

みんな同じで、まるで兄弟が増えたように思えた。居心地が良かったのだ。

 

 

しかし、男はもともと協調性の無い人間だった。それに、過去

人に騙される事も多く

簡単に人を信用しなくなっていた。

 

それが故に、主の言葉の全てに

賛同出来ない自分がいたのだ。

 

 

徐々に、主や、周囲の人間に対しても、

不信感を抱くようになった。

 

 

そう、人間にはそれぞれの

考え方がある。

生まれ育った環境も違う、

経験も人それぞれだ。

全ての考え方が一致する筈がない。

 

だんだん、男は壁の中の

居心地が窮屈に感じるようになってきた。

 

 

 

その男の様子を

主は見逃さなかった。

 

「裏切り者め!」

 

主は本来の魔女の姿になって

男の前に現れた。

 

「許さない!」

その表情は、怒りそのもの。

 

 

男は無我夢中で逃げだ。

 

すると、眼の前に壁が現れた。

 

しかし、刃を振り翳し

迫る魔女。

 

「もう、駄目だ!」と目を瞑った。

 

 

 

 

しばらくして、恐る恐る目を開けると、

いつもの光景が眼の前に広がっていた。

行き交う人達と、

車のクラクション。

 

「夢を見ていたのか?」

 

 

男は、立ち上がり

周囲を見渡した。

 

そこには、魔女の姿も

あの、不思議な壁も

何処にも無かった。