シングルファザーの子育てブログ

双子の女の子を育てるシングルファザーの奮闘劇。

ある男の話。①

この前、家で書類を整理していた。 

不要な書類はシュレッダーにかけるつもりで

分けていると、昨年度の育成会名簿が出てきた。

何気に見ていると、配偶者欄が空白の家庭がチラホラ目立つ。我が家もそうだが、ひとり親の家庭だ。

 

ウチのような死別でひとり親になった家庭も

中にはあるとは思うが、やはり、殆どが離婚なのだろう。様々な事情はあるだろうが、

 

 

離婚と言えば・・・子供の養育費。

ウチのように死別では、あの世の妻へ養育費は請求出来ませんが、(笑)

みなさん、受け取っているのだろうか?

世間では、支払わない男(稀に女)が多いと耳にする。

 

少し前に、子供の養育費についての投稿を目にする機会が有った。

 

それは、・・・

「離婚後、お前に新しい男が出来たら、俺は養育費を支払うのを止める」と言った身勝手な男に怒る方の投稿だった。

コメント欄にはたくさんのコメントが、

「男として最低」

「自分の責任も取れない最低な奴」

等のコメントが多かった。

それは当然である。

僕も同じ意見だ。

しかし、どうも読んでいて、ある男を思い出して複雑な思いがした。

 

 

 

 

【ある男の話】①

 

その男は20代前半に結婚をした。

 

相手は同じ職場の一つ年下のÀ子だった。

 

 

しかし、A子には付き合っている時から

上司と不倫の噂があった。

当然、男の耳にも噂話は入っていた。

彼は、いつも悩んでいた。

「噂は本当なのだろうか?」

逢う度に何度も、何度も真相を訊こうとしたのだが・・

彼に甘え、いつも笑顔の彼女に訊く勇気が無かった。怖かったのだ。

 

そんな付き合い出して間もない頃、

職場の社員旅行があった。

社員も多かったので旅行は前半・後半に別れて、バスは各2台で行くことになった。

彼とA子は同じ前半だったが、バスは別々だった。

・・・しかし、A子のバスには噂相手の上司も一緒だったのだ。

 

ある場所を見学中の事だった。

彼の仲間が彼に耳打ちをする

「おい!あれを見てみろよ」

言われるままに遥か前を見てみると、

そこには、上司とA子の姿が!

しかも、仲良く手を繋いているではないか!

「噂は本当だったのだ!」

彼はその時、膝がガクガク震えて 

しばらくは誰の言葉も耳に入らなかった。

とても、旅行を楽しめる気分でなくなり

ひとり落ち込んでいた。

   

夜の宴会の時、A子がお酌をしに来た。

酔っているらしく、はしゃいで話掛けてくる。・・・しかし、彼は素っ気ない態度で

席を離れて、仲の良い先輩達のところへ行ってしまった。

本当は昼間の事について問い詰めたかった。

しかし、こんなにみんなが楽しんでいる場所で言うことも出来ない。

 

すると、仲が良くて

二人が付き合っていることを知っている

先輩が、「A子達、夜の海を見に言ったぜ、しかも、Mの野郎も一緒だ! 今から行ってみるか?」

Mとは、例の上司だ。

「もう、どうでもいいよ」

彼はすっかり疲れ果ててしまった。 

 

翌日、彼はバスに乗り込むと驚いた。

なんと、A子がいるではないか!

「こっちに移って来たから」とニコニコしながら彼を待っていた。

そして、直ぐに彼の隣に座った。

彼は「頭が痛いんだ、ひとりにしてくれ」と

言って目を閉じてしまった。

隣で、「大丈夫?」と何回も聞いて来る。

しかし、彼は黙ったまま。

 

さすがに、A子は周りの人間に

「どうしたんだろ?」と訊いている。

「昨夜、飲みすぎたんじゃね?」とか

「寝ていなかったんじゃね?」とか

言っていたのだが、一人だけ、

「自分の胸に手を当てて考えてみろ!」と

言った人がいた。彼の先輩だった。

 

旅行の2日目の間、彼は終始A子を無視していた。そして、帰りがけに、

「後で話があるから・・」とだけ言い残し

家に帰ったのだった。

 

数日後、彼はA子を呼び出し話をした。

別れ話を言うためだった。

・・・今、思うに、この時別れていれば

彼はその後に地獄を味わう事はなかったのだ。間違いなく彼のその後の人生は変わっていただろう。

 

待ち合わせ場所にA子がやって来た。

直ぐに彼の車の助手席に乗った。

彼は車を動かすこと無く、話を始めた。

そう、M上司との事についてだ。

 

すると、全てが誤解だとA子は言う。

A子の家は喫茶店でMは昔からの常連。

幼い頃からMの事は知っていたし、

偶然、同じ職場になったので親しくしているそうだ。

それを、「信じて!」と涙を流しながら話している。

「・・・・・。」

彼は、無言で彼女の話を聞いていた。

「俺が信じなくてどうする」と思った。

彼は、彼女を信じる事にした。

彼女の涙を信じたのだ。

 

 

その後、二人は順調に交際を続けた。

 

しばらくすると、お互いの家に行って 

交際していることを報告した。

A子の家は喫茶店

母親は初めは凄く感じが良かった。

お揃いの服(ペアルック)を買ってくれたり、いろんなデートコースまで教えてくれた。父親は話をするのが苦手な感じで口数は少なかった。

「上手くやれるような気がした」

良い親で良かったと彼は思った。

 

しかし、ある日のこと、

彼は同じ職場の女の先輩に注意された。

その人は、A子の家の近くに住んでいる。

「とにかく、変わっている家なので気を付けた方が良い」

えっ!、どうして?

「近所でも評判が良くない」と言うのだ。

僕は、「そんな風には思えない」と反論したのだが、最後に先輩は、

「知らないよ!」と言うだけだった。

この時は、全く信じられない話だと思っていたのだった。

 

ただ、交際が進むにつれ、

A子の母親はいろいろと彼の家の事を聞いて来るようになった。

土地はどのくらい所有しているのか?

(彼は次男なので)どのくらい将来に財産を相続出来るのか?

やたらと彼の家の財産を聞いて来た。 

「何故、そんな事を訊くのか?」

すると・・・「娘をここまで育てるのに、今までいくら掛かったと思います?」

「ここまで、お金を掛けて育てたんだから、それなりに財産のある家の人でないと結構は親として賛成出来ない」と言い出した。

 

彼は、「知らない」としか言えなかった。

それに、顔を合わせる度に、

金・金・金と言ってくる親に嫌気が差した。

おまけに、夕方になると、

奥の部屋から何かが聞こえる。

お経だ!

間違いなく、〇〇学会だ。

 

・・・その帰り、車の中で彼は考えこんでしまった。止めた方が良いのかも・・と。

 

更に、A子の家の情報が彼の耳に入ったのだ。

噂好きの彼の姉が、何処から調べた情報か、

彼に「絶対に結婚してはいけない」と言って来たのだ。

 

彼は考えた。

A子とは上手くやれても、あの親とは無理だ。ここまで評判の悪い家を聞いたことも無い。 

・・・彼女と別れるのは辛いけど

彼女との結婚は無理だ。

辛いけど・・・・

彼は別れる事を選択した。

  

ある日の夜、彼はA子に電話をした。

「大切な話がある、明日会わないか?」と

すると、A子も、

「実は、私も大切な話がある」と言う。

次の日に逢う約束をした。

・・・しかし、彼はA子の大切な話って

何なんだろう?と気になっていた。

 

そして、翌日。

笑顔でやって来たA子。

「大切な話って何?」と訊いてくる。

別れ話を言い出しずらい。

そこで、「A子も大切な話が有るんだろ、先に言っていいよ!」と彼は話を譲った。

 

すると!!

 

「あのね。赤ちゃんが出来たみたい」

・・・彼は、言葉を失った。

 

彼は、凄い短時間の中で、

自分の思いを180度回転させた。 

いや、そうするしか無かったのだろう。

何しろ、別れを告げれば

必ず、お腹の中の子供が不幸になる。

 

・・・こんなに嬉しそうに子供が出来た事を言っている。

彼は、彼女を抱きしめた。

 

そして、

「大切な話って何?」と訊かれた。

彼は・・・・。

「プロポーズを言おうと思ってたんだ」と

言うしか無かったのだった。

 

そうして、彼らは結婚することになった。

・・・それが、彼にとって不幸の始まりに

なるとは彼自身、夢にも思っていなかった。

 

           ②へ続く。